Part 3キホンのキ ねじの6要素

ねじの6要素②:ねじのリセス

ねじの6要素②:ねじのリセス

リセスとは、ねじを締め付ける際に工具をはめ合わせる頭部のくぼみのこと。ねじのくぼみというと、プラスの十字穴を思い浮かべる人が多いと思いますが、実は十字穴を含めて種類が複数ある、ねじの重要な要素です。 正しい工具を使用しないと、適正な締め付けができないケースや、工具の浮き上がりによって十字穴を傷つけるカムアウトを引き起こしてしまい、トラブルの原因になってしまうことがあります。 使い分けのポイントとしては、ねじの種類やサイズによって、リセスが違う場合があることを意識し、画像のようにガタつかず、リセスにフィットする工具を選ぶようにしてください。またねじに垂直に力を掛けつつ、押し付ける力7、回す力3の割合のイメージで使用すると良いでしょう。

十字穴No.2に対して左から工具呼び番号No.1、No.2、No.3の並び。
No.1は隙間がありカムアウトしやすく、No.3は工具が入ってないことがわかる。

現在はプラスの十字穴が一般的ですが、1900年代に入るまでは世界で流通しているねじは四角頭やマイナス溝が一般的でした。マイナス溝は加工が容易なことから普及しましたが、工具が外れやすいという欠点を抱えており、1907年にカナダのロバートソンが発明した四角穴(スクエア)が出てくると、片手で扱えるねじとして歓迎され、カナダ国内で人気を博しました。その後、英国や米国でも製造を試みましたが、第一次世界大戦やねじ製造会社との交渉が上手くいかなかったこともあり、カナダ以外の国々へは広がらなかったようです。カナダ国内では現在でも多く使われており、近年では日本国内でも、建築関連のねじで使用されてきています。 1935年になるとロバートソンの発明の影響もあり、リセスの開発に力をいれた米国のフィリップス社が十字穴を発明しました。その後十字穴は米国の自動車に採用され、効率性の良さから瞬く間に広がっていくこととなります。日本でも1938年に特許契約を行い、十字穴が製造されるようになり、1950年代末の家電ブームとともに広く普及していきました。

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近年では自動化のニーズが高まり、高トルク締付時のカムアウト対策や、ビット折れ対策として、十字穴と互換性があり工具の浮き上がりを防ぐ「トツプラⓇ」や、ビットとねじが素早く勘合する「インタトルクⓇ」の採用が増えてきています。これらのリセスは作業者の位置決めスピードやねじの落下の防止に効果を発揮しており、ロボットによる作業の自動化でも注目されてきています。

トツプラⓇ/インタトルクⓇの写真
トツプラⓇ/インタトルクⓇの写真

ねじの6要素③:ねじの頭部

ねじの6要素③:ねじの頭部

ねじの頭部の使い分けのポイントは、作業環境や使用する箇所の空間、外観、締結する素材を陥没させないためなどが考えられます。締付時に工具や部品が他の部品とぶつかるなど空間に制限がある場合では、横からレンチなどで締結が可能な六角ボルトや、なべ頭より頭部が低いバインド頭などを使用するケースもあるでしょう。ねじの頭部は、前述のリセスや工具と合わせて考えると分かりやすいので、次の表を参考にしてください。

1.なべ/2.皿/3.トラス/4.バインド/5.六角/6.CAPの写真 1.なべ/2.皿/3.トラス/4.バインド/5.六角/6.CAPの写真
ねじの材質表

ねじを締め付けると頭部が押し付けられ、相手材へ強い力が加わっていくため、陥没して傷つけてしまう恐れがあります。接する座面が大きいねじを選ぶと陥没防止になり、相手材の保護にも効果的です。また、ねじは振動でゆるむことが多いと思われがちですが、締付時の座面の陥没でもゆるみを発生させてしまうので、選定の際は注意してください。座面を広くする方法として平座金(ワッシャー)を併用することもゆるみ対策には効果的です。

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近年ねじの頭部は、作業性や防犯性を改善した新しい形状が開発されており、頭部の高さが薄いねじの需要も高まっています。自動車分野では、作業性が良く、頭部が薄いため軽量化が可能な「LH-SSⓇ」が採用されたほか、繰り返し洗浄することで防水用のOリングが劣化するという課題のあった食品関連の設備では、座面の裏に溝をつけることで外部からの圧力を分散し液体の侵入を防ぐことができる「ラビロックⓇ」が採用されるなど、新しい頭部形状も使用環境にあった採用が増えています。薄頭のねじでは、「サンフラット」と呼ばれるステンレスの薄頭のねじも販売されており、外観をすっきり見せたい製品などで使用されています。

LH-SSⓇ/ラビロックⓇ/サンフラットの写真
LH-SSⓇ/ラビロックⓇ/サンフラットの写真

参考文献

1)
ねじ・機械要素が一番わかる,大磯 義和 著
2)
絵とき「ねじ」基礎のきそ,門田 和雄 著
3)
ねじとねじ回し この千年で最高の発明をめぐる物語, ヴィトルト・リプチンスキ 著
4)
種子島から世界・未来に向けて, 社団法人 日本ねじ工業会 発行
5)
絵とき「めっき」基礎のきそ,プレーティング研究会 編者
6)
メイカーのための ねじのキホン,門田 和雄 著

取材協力

株式会社丸エム製作所、株式会社神山鉄工所、種子島開発総合センター「鉄砲館」