よむ・みる・わかる・役に立つ!ねじソムリエの「ねじのちょっといい話」
よむ・みる・わかる・役に立つ!ねじソムリエの「ねじのちょっといい話」
Part 46つの要素で「ねじ通」に、という話
ねじの種類は材質や形状、サイズが異なれば違うアイテムなので、一見同じように見えるねじでも用途にそぐわない場合があります。ねじの多くはJIS規格(日本産業規格)で取り決められていますが、メーカーで開発・流通しているねじもあるため、市場で取り扱いされるねじは、数十万種類にも及んでいます。膨大な種類のあるねじについて理解を深めるには、「6つの要素」という視点が有効です。
設計を行う場合、以下の6つの要素を意識して適材適所のねじを選び、使っていただければと思います。
ねじで使用されている材質は、鉄、ステンレス、真鍮、アルミ、チタンなど多岐にわたります。その中でも鉄とステンレスが多く、特に鉄は安価なため、一番多く使われています。ステンレスは錆に対して強いという特徴があるため、錆やすい水回りなどに使用されています。また、真鍮は電気が流れやすいため、家電製品などに多く使用されています。
材質で注意しなければならないのが、金属の強度です。同じ鉄であっても成分の違いがあります。ねじの強度は強度区分という規格で定められ、決まっている強さまでは引っ張られても元の形に戻る、折れないという基準が決まっています。特に六角穴付きボルトは強度を求められているため、12.9(黒染)、10.9(めっき)と刻印されています。
これは12.9=120キロの力が加わっても破断しない、120キロの9割(108キロ)までは、力が加わっても戻ることを保証する印です。なお一般的な六角ボルトの強度区分は4.8となっています。これは、40キロの力が加わっても破断しない、40キロの8割(32キロ)までは、力が加わっても戻るという印であり、こうした条件からも、材質で強度が異なることがわかります。
ねじの頭部にあるくぼみが「リセス」です。このくぼみにドライバーなどの工具をはめてねじを回転させることで、締結することが可能になります。ねじのイメージとしては十字穴タイプが一般的ですが、六角穴、すり割り(マイナス)、六角頭、星形のヘクサロビュラなどのタイプも様々な分野で使用されています。
十字穴は工具の位置決めが容易であり、作業性に優れているため数多く使われています。手首を少し回すことで十字穴へドライバーの先端がはまることをイメージしてもらえれば、理解はしやすいと思います。また、ねじの太さによって、十字穴の大きさがNO1、2、3と決められています。これは、ねじの太さによって必要とするトルク(回転する力)が異なるため分けられているものです。
締め付けする際のトルクを高くすることができる六角穴は、六角穴付きボルトなど強度の高いねじに使われています。
プラスマイナスは、家電製品に多く使われていることが多く、+-どちらの工具でも使うことができます。 六角穴ピン付きは、専用の工具がない場合緩めることが困難になるように、車のナンバープレートの固定や公園の遊具の組立等、いたずらを防止するといった目的で使用されています。 なおどのリセスにも共通して言えますが、適切な大きさの工具を使用しないで回転させようとした場合、回すことができないか、または回すことができたとしても、工具とリセスの接触している面積が小さいため、先端が浮き上がり空転してしまいます(カムアウト)。カムアウトを引き起こすと、ねじを締結することができないばかりか、リセスを削って使えなくしてしまい、さらには工具を破損させてしまうので、正しいサイズの工具を使う必要があります。
ねじの頭部の形状は、頭部の大きさ、高さの違いによる外観、スペースの違いなど様々です。頭部の形状の違いは、外観だけでなく機能面にも関係しています。トラス頭は陥没防止による緩み止め効果を付与するほか、六角頭のように、側面から締め付けといった締結方法と関連する頭部形状もあります。
参考文献
- 1)
- 大磯義和:ねじ・機械要素が一番わかる,技術評論社,2011年
- 2)
- 門田和雄:絵とき「ねじ」基礎のきそ,日刊工業新聞社,2007年
- 3)
- プレーティング研究会編:絵とき「めっき」基礎のきそ,日刊工業新聞社,2006年
- 4)
- 日本規格協会編:JIS ハンドブック4-1,ねじⅠ
- 5)
- 日本規格協会編:JIS ハンドブック4-2,ねじⅡ