よむ・みる・わかる・役に立つ!ねじソムリエの「ねじのちょっといい話」
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Part 46つの要素で「ねじ通」に、という話
おねじの中には、主に小ねじとタッピンねじという種類があります。小ねじは、すでにめねじが作られているナットなどとセットで使用されます。タッピンねじは、下穴が空いているところに、ねじ山を自分で作って締結します。
小ねじは繰り返し使うことができるスタンダートなねじですが、使用するには、ナットまたは相手部材にめねじを加工してある必要があります。
タッピンねじは、下穴が空いていれば締結することができるため、部品点数と手間を少なくできることが最大のメリットです。主に市場で使用されているタッピンねじには、1種、2種、3種がありますが、特に多いのは2種で、様々な製品で使用されています。ただしタッピンねじにもいくつか弱点があります。ねじ山を自分で作るため、何度も使用することが難しく、最終的にはねじ破壊、いわゆるねじばかの状態になって空転してしまうことがあります。また、ねじでねじ切りをするため、必要とするトルクが高くなってしまい、小ねじと比べると締結するには大きな力が必要となります。
メーカーが開発しているタッピンねじの中には、必要トルクが小さく作業性に優れているものや、薄板用、プラスチック用など、従来のタッピンねじの課題を解決する製品もあり、ねじ部の形状は用途に合わせて進化し続けている要素です。
ねじのサイズ表記は基本的には、メートルねじであるため径の大きさ(M)×長さ(L)で表記されています。皿頭を除き、ねじ頭部の首下(リセスの反対側)からねじの先端までが長さとなります。皿頭の場合は、頭部の先端からねじの先端までが長さと表記されています。インチねじといった種類もあるため、ねじを使用する場合は測り方を理解し、正しいサイズを選定する必要があります。
金属加工において鉄は加工性が良く使い勝手のよい材料ですが、空気中の酸素と鉄が化学反応を起こし錆びてしまうという弱点もあります。そのために生まれた技術が表面処理です。その代表例がめっきで、めっきを施すことで耐久性を向上させています。めっきで一般的に使われているのが、電気亜鉛めっきです。最近では、環境への対応から三価クロメートと表示されているものが増えていますが、防錆の仕組み自体は変わっていません。鉄より酸化しやすいものをめっきとして金属の周りに付着させ、鉄が酸化する前に亜鉛が酸化することで、鉄素材を守ります。このことを犠牲防食と言います。鉄のねじで言われている白錆とは、めっきに使われている亜鉛が酸化した酸化亜鉛で、この時点では鉄はまだ腐食しておらず、錆が鉄の素地まで至ってしまった場合には赤錆が発生します。
錆が発生しやすい環境としては、一般的に屋外で風雨に晒される場所、また沿岸地域が挙げられます。これは酸化する化学反応の条件として、水分と塩分が多いと化学反応が活発になり酸化が進むためです。まためっきは金属の表面に薄い皮膜を形成して金属を守っているため、金属への深い傷があった場合は犠牲防食がうまく働かず、錆の発生を引き起こしやすくなります。
参考文献
- 1)
- 大磯義和:ねじ・機械要素が一番わかる,技術評論社,2011年
- 2)
- 門田和雄:絵とき「ねじ」基礎のきそ,日刊工業新聞社,2007年
- 3)
- プレーティング研究会編:絵とき「めっき」基礎のきそ,日刊工業新聞社,2006年
- 4)
- 日本規格協会編:JIS ハンドブック4-1,ねじⅠ
- 5)
- 日本規格協会編:JIS ハンドブック4-2,ねじⅡ