よむ・みる・わかる・役に立つ!ねじソムリエの「ねじのちょっといい話」
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Part 5「緩み」との飽くなき戦い、という話
ねじの緩みには、非回転による緩みと回転による緩みの2種類があります。
非回転による緩みの代表例は、陥没による緩みです。ねじは締め付けた際に座面に大きな力がかかるため、座面の材質がアルミやプラスチックのような柔らかい材質や薄い材質の場合、陥没し最悪外れてしまうことにも繋がります。陥没を防ぐには、座面の面積を増やすことが効果的であり、平座金と呼ばれる部品がねじと一緒に使われています。
回転による緩みは、その名の通り振動や衝撃などで、ねじ山とねじ山にある隙間が影響し回転して緩んでいくことを意味します。ねじが緩まないように多用されているのが、ばね座金と呼ばれる螺旋状のばね。緩み止めの役割が期待でき、平座金とセットで多く使用されています。またおねじ、めねじ共に回転して緩まないように、多くの製品が開発されており、接着剤を活用したロック材、ねじが戻りづらいようにナイロン樹脂を入れて摩擦力を高めたナイロンナットなど、使用中に戻らない工夫を施したねじが数多くあります。
Part 6ねじにまつわる代表的トラブル、という話
ねじ穴がつぶれてしまって回すことができない、ステンレスのねじが焼付いてしまい固まって回すことができないなど、トラブルが起こったことはありませんか?
ねじ穴がつぶれてしまう原因としては、正しいサイズでの工具締結ができていないことによってねじを押さえつける力(推力)が小さくなり、工具の浮き上がりによるカムアウトが発生、リセスを削ってしまうことが挙げられます。
一般的には回転する力30%、押す力70%で工具を使用すると良いと言われており、工具がねじに対して垂直に接していないと、カムアウトが発生しやすくなります。設計段階で出来る解決方法としては、トルク伝達に優れているリセスを採用することや、検討時に適正な締付トルクを設定することが挙げられます。特にタッピンねじは材質や板厚、下穴の大きさなどから適正締付トルクは変わるため試験機による検証を行い、トルク設定をする場合があります。
また、ステンレスねじの焼付きの原因は、ステンレスが摩擦係数と熱膨張率が高く、熱伝導率が低いという材料の特徴が原因なため、潤滑性を良くする焼付き防止コーティングが有効です。
Part 7ねじ市場の最新事情、という話
ねじ市場はとかく変化が少ない市場と思われがちですが、実際には、軽量化、高強度、緩み防止、効率化、小スペースなど多様なニーズがあるため、いろいろな新しいねじが日々世の中に生み出されています。また、最近では、ねじ本来の目的である「締結する」という役割以外のねじも多数開発されています。
歴史の長い業界ですが、まだまだ発展してゆく可能性がねじ業界にはあります。
参考文献
- 1)
- 大磯義和:ねじ・機械要素が一番わかる,技術評論社,2011年
- 2)
- 門田和雄:絵とき「ねじ」基礎のきそ,日刊工業新聞社,2007年
- 3)
- プレーティング研究会編:絵とき「めっき」基礎のきそ,日刊工業新聞社,2006年
- 4)
- 日本規格協会編:JIS ハンドブック4-1,ねじⅠ
- 5)
- 日本規格協会編:JIS ハンドブック4-2,ねじⅡ